近年日本でもグルメの一つとして注目を浴びてきている「ジビエ」。
実は日本でジビエ肉が大きく推進されるようになってきたのはある社会問題が背景にあるのをご存知でしょうか?
そもそもジビエとは狩猟で得た天然の野生鳥獣の食肉を意味する言葉(フランス語)で、ヨーロッパでは貴族の伝統料理として古くから発展してきた食文化です。
その昔フランスなどでは、ジビエを使った料理は自分の領地で狩猟ができるような、上流階級の貴族の口にしか入らないほど貴重なものだったため、フランス料理界では古くから高級食材として重宝されてきました。
一方日本では、古くから山岳地帯などのマタギと言われる猟師たちがシカやクマ、イノシシを獲って食べていた歴史があり、今でもマタギ文化継承の取り組みのひとつとして「マタギ料理」や「マタギ飯」は知る人ぞ知る珍味として知られています。
ところが近年、本来山や森林の奥地に住むはずの野生動物たちが里山におり始め、畑の農作物を荒らす獣害被害があとを絶たなくなっています。そのため各地で害獣駆除のためハンター達が獣達を捕獲するようになりました。
しかし現状、仕留められた野生動物達は、そのほとんどが焼却または埋立て処理されており、ジビエ肉として食されるのは10%にも満たないのです。
その理由としては、捕獲後の処理や管理、品質の維持の難しさ、加工処理施設の不足、お店でのジビエ肉提供にあたっての問題など、まだまだ課題は山積みです。
しかしながら、ジビエを好んで食べる人が増えることでジビエ肉の需要が高まり、しっかりと価値を見出せるようになれば、これらの課題も改善されていきます。ジビエ肉を食べることで、今まで捨てられてしまっていた食材を活用することができ、日本のフードロスの削減、そして新たな価値の創造に繋がるのです。
■日本橋兜町でジビエ肉を提供しているTOKYO CAMP 小林さん
小林さんは、都内でキッチンカーを運営、そこでジビエ肉料理を提供しています。イノシシ、シカ、クマ肉などを主に扱っており、ホットドッグやカレー、スープなどとして提供しています。
「ジビエは豚や牛肉と比べて低カロリーでエネルギー吸収率が高く、鉄分など栄養素も豊富に含まれているため、ダイエットや健康面を考えても食べるメリットが大きいです。意外にも実は臭みもなくとっても美味しいんです。」と語る小林さん。
以前、初めてジビエを食べに行った時に「ゲテモノ料理」として紹介されたことに衝撃を受け、ジビエのイメージを良いものにしていきたいと思い、今の取組みにたどり着いたそうです。
現在は、農作物被害が深刻な新潟県で、新たなジビエ肉の解体場を作ることを見据えて活動の幅を広げています。
■Heart for..としての取り組み