30年以上前の「ハンバーグ袋」が海底に!

千葉県沖の海底で、大量のプラスチックごみが見つかった――。今年3月下旬、海洋研究開発機構(JAMSTEC)が海底のごみに関する調査結果を発表しました。


現場は、房総半島から約500キロの沖合。太陽の光が届かず、暗黒が支配する水深6000メートル前後の深海底です。この場所が、海に流れ出たプラスチックごみの「集積地」のひとつであることが、有人潜水調査船「しんかい6500」を使った調査で明らかになったのです。


この付近の海底に存在するプラスチックごみの密度は、1平方キロメートルあたり4561個にのぼります。大量のポリ袋のほか、風船や歯磨き粉のチューブも落ちていました。

インドネシア・バリ沖の海面下を漂うプラスチックごみ=朝日新聞社

そのうちのひとつは、レトルト食品の「チキンハンバーグ」の袋。製造されたのは「昭和59年」(1984年)であることが、袋の表面にあった刻印から分かりました。


なんと、捨てられてから30年以上たっても、ほとんど劣化せず、そのままの姿で海底に横たわっていたのです。

泥をかぶって海底に横たわる「ハンバーグの袋」
=JAMSTEC提供

このハンバーグの袋をみると、生物に分解されず、環境中にいつまでも残り続けるプラスチックごみの厄介さを改めて感じます。


プラスチックの大量生産は1950年代に始まり、2016年までの生産量は計83億トンにのぼります。そして、世界では毎年、1000万トンを超えるプラスチックごみが海に流入し続けているといわれます。しかし、実際に海面に浮かぶ量はわずか44万トンとされ、残りの大部分の行方はよく分かっていません。


今回見つかったのは、そうしたプラスチックごみの氷山の一角です。JAMSTECによると、海の表層から沈み込んだプラスチックごみは、1週間以内に水深4000~6000メートルの海底に到達すると推定されています。



クジラや魚の体内からもプラスチックが

プラスチックごみは、さまざまな海洋生物の体内からも見つかっています。


神奈川県鎌倉市では2018年、体長10メートル余りのシロナガスクジラが打ち上げられました。生まれて数カ月のオスで、すでに死んでいました。その胃の中からプラスチックごみが見つかり、ニュースになりました。


インドネシアの島に流れ着いたマッコウクジラのケースでは、ポリ袋やペットボトルなど、約6キログラムもの大量のプラスチックごみが胃の中から出てきたと報道されています。

鎌倉の海岸に漂着したシロナガスクジラ。
体内からプラスチックごみが見つかった
=朝日新聞社

クジラだけでなく、ウミガメや魚、海鳥など、国内外ではこれまでに200種類を超す海洋生物の体内からプラスチックが見つかっており、たくさんの命を犠牲にしています。


このままのペースで行くと、海洋プラスチックごみの量は2050年までに、世界中の魚の重量を超えてしまうのではないか、との予測も発表されています。



いま特に問題となっているのは、食料品の容器や飲料のボトルなど、一度使ったらすぐにごみになってしまう「使い捨てプラスチック」です。


プラスチックごみは、燃やして処理をすることもできますが、地球温暖化を招く二酸化炭素が発生してしまうという問題があります。また、リサイクルをするにも限界があります。このため、プラスチック製品の消費量そのものを抑える取り組みに力を入れるべきだと専門家は指摘しています。


中でも「マイクロプラスチック」は、プラスチックごみのうち、大きさが5ミリ以下のものをさし、小さな破片や粒が、世界中の海を汚して問題になっています。


もともとは大きなプラスチック製品も、太陽の熱や紫外線、波の力などで細かく砕けることで、マイクロプラスチックとなり、海の中を長い期間漂うようになります。


このほか、プラスチック製品の原料である「レジンペレット」という粒や、化粧品などの成分として使われてきた「マイクロビーズ」、フリースなどの服を洗濯したときに出てくる細かい化学繊維も、マイクロプラスチックの一種です。


マイクロプラスチックは海流に乗って広がり、美しい南の島々の浜辺はもとより、南極海でも見つかっています。


年々深刻化する海のプラスチックごみの問題は、「SDGs」(持続可能な開発目標)の中でも課題の一つとして位置づけられています。


SDGsでは、「貧困をなくそう」、「飢餓をゼロに」など17の目標があり、それぞれの目標を達成するために、具体的に何をするべきかを169項目の「ターゲット」で示しています。2015年の国連総会において全会一致で採択され、2030年までの達成を目指します。


SDGs14番目は、「海の豊かさを守ろう」です。この目標の中で、海のプラごみ問題について、「2025年までに海洋ごみなどを含む海洋汚染を防止し、大幅に減らす」というターゲットが設定されています。 


また、プラスチックごみの問題は、プラスチック製品の作り方や使い方の問題でもあります。したがって、「つくる責任 つかう責任」(目標12)ともリンクさせて対策を考えていく必要があります。(引用:朝日新聞社)



Heart for..では、上記のような海洋問題について少しでも多くの方に知ってもらうため、夏季のビーチクリーンや海洋ゴミをアップサイクルしたジュエリー製作を行なっています。イベントやプロダクトの詳細情報はInstagramで発信していますので、ぜひご覧ください。

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